パイセン

わたしの生い立ち

三章 涙のマダンテ

六年生になってわたしも着々と大人に成長して来た夏の終わり

六年生の一大イベント京都、奈良への修学旅行が始まろうとしていた

わたしは普段仲の良い友達と班を作り目的地を決めた

特に行きたい場所などなく清水寺に決まったのだ

夜はなんとホテルでの宿泊にキャンプの時の裏切りを思い出しつつ

それでも小学生、楽しみが抑えきれなかった

 

ついに来た修学旅行当日…

わたしは道中魔力が暴走しない様、親からもらった酔い止めを口にし、決戦に臨んだ…

普段学校で会う平穏な感じとは違う、ピりついた空気…

わたしは一瞬で察した…間違いない…なにか不吉な事が起こると

しかし、わたしの予想とは裏腹に順調に進んでいくバスの中でのレクリエーション

カラオケ、トランプ、映画鑑賞、楽しい!皆が全力で楽しんでいた

なんだ、杞憂か…そんなこと思いつつふと後ろを覗く

ッッツ!!グギ!!口から暴走しそうな魔力を必死に抑え込む同級生

自分のMPを全て消費して相手に暴走した魔力をぶつけるマダンテ一歩手前だった

魔力を抑える同級生の横で怯える女の子

自分を犠牲にして魔力を受け止めようとする先生

わたしは現実を直視できず、とりあえず映画を観ることにした

見殺しにしたのだ…すまないわたしに力が無いばかりに…

悔しさと初めて人の苦しむ姿を見て涙が溢れそうだった…

一瞬の出来事だった

全部出しなさい!突然先生が叫んだ、そう遂に暴走したのだ…

まるで氾濫した河川がダムを決壊させるように魔力は暴走した

まさに、この世の終わりと言える暴走音が皆をパニックにさせる

しかもバスの中、密です密です、ソーシャルディスタンスなどまるでない

響き渡る叫び声、漂う悪臭バスの中が地獄になった瞬間である

わたしは神に祈ることしかできなかった

しかし、神に祈りを捧げて間もなく暴走も威力を弱め始めた

今だといわんばかりに先生が背中をさする

ウッ!と奇声じみた声を出しながら落ち着いていく同級生

戻るのだ…またみんなで夏祭りを歌いながら楽しい時間を過ごすのだ!

皆、歓喜に心を躍らせた、先生の顔にも少しずつ穏やかさが戻り

同級生も落ち着き、失ったMPの回復に専念していた

さぁ、立ち上がれ宴の時間だ

我々は危機を乗り切った革命同士なのだから…

それぞれのドリンクでそれぞれが乾杯をし始めた

長い夜明け新しい朝に乾杯と…

 

次回 呪われし黒刀